トイレがないと不安!心因性頻尿の原因と治療法

トイレに行く回数が増えたな、と感じる方の中には頻尿になっているケースもあります。頻尿の中でも、身体的な要因、膀胱や尿道の病気がないものが「心因性頻尿」です。改善の第一歩として、自分の症状を把握し、原因を探ることが大切です。そこで今回は、心因性頻尿の主な原因や症状が出やすい人の特徴、治療法などをお伝えします。

心因性頻尿とは

心因性頻尿の定義1)

頻尿にもいくつか種類がありますが、心因性頻尿は心理的な緊張や不安によっておこる頻尿です。検査をしても膀胱や尿道などに明らかに頻尿の原因となる病気が見つかりません。成人では女性に多いとされています。

心因性頻尿の特徴1,2)

心因性頻尿は、日常の中で何度もトイレに行きたくなってしまいます。常にトイレが気になり、バス旅行などのすぐにトイレにいけない場面では、逆に尿意が激しくなるというのを繰り返します。それを避けるために、自分で日常生活の行動を制限してしまことが少なくありません。この頻尿の特徴は、集中しているときや寝ている間には症状は現れません。また、下腹部の圧迫感や胃や腸の症状などを伴うこともあります。

心因性頻尿になりやすくなる原因

主な誘因1、3)

心因性頻尿の症状は、精神的なストレスが原因で起こりやすいと言われています。具体的には、仕事やいじめなどの緊張やストレス、不安障害やうつなどがあります。心因性頻尿は、トイレに対して過剰に不安を感じ、「もしトイレに行けなくて間に合わなかったらどうしよう?」という心理からきています。その影響によって膀胱が収縮しやすくなり、頻尿を引きおこしてしまいます。

心因性頻尿になりやすいタイプ

心因性頻尿になりやすい方の特徴を確認してみましょう。

  • 心因性頻尿になりやすいタイプ

    体が緊張を感じてしまうと、神経は平常時よりも過敏に反応します。その影響で尿意を感じるのが早く、頻尿となることがあります。面接やプレゼンなどによって緊張している場合は、その状況が過ぎ、緊張が解けることで頻尿の症状もおさまります。

  • 自律神経が乱れている

    自律神経が乱れてしまうと、交感神経と副交感神経のバランスが上手く保てなくなります。それにより、尿意を適切に脳に伝えることができず、過剰に尿意を感じ取り頻尿になることもあります。

  • 過去にトラウマがある

    以前、尿意を感じてもなかなかトイレに行けない状況に陥ってしまったなど、排泄に関する苦い経験がある場合にも、「またあの時と同じような、辛い状況になったらどうしよう」という不安から、体が条件反射で尿意を感じて頻尿になるケースもあります。
    また、急に尿意が来る尿意切迫感や、切迫性尿失禁などの症状を経験している方も、尿意や漏らしてしまう不安から、心因性頻尿になることがあります。

  • 幼い子ども

    幼い子どもは排尿反射が未熟なため、少しの緊張で頻尿になるケースがあります。例えば、昼間のたまたまのお漏らし、親や教師にお漏らしを注意されたこと、強く叱られたこと、住まいなど環境の変化や、遊戯会や発表会などをきっかけに頻尿となることがあります4)

心因性頻尿の診断方法

心因性頻尿はどこで診断するか

心因性頻尿の可能性があるなら、症状の進行を防ぐためにも専門医による診察を受けることをおすすめします。しかし、精神的なことが影響しておこる頻尿なので、何科を受診すればよいのか迷うかもしれません。まずは、泌尿器科や婦人科などで、「心因性頻尿以外にも、頻尿を引きおこしている原因はないか?」と診察を受けます。膀胱や尿道、脳や脊椎などにも特に原因が見つからない場合、心因性頻尿が疑われます1)

心因性頻尿以外の頻尿

頻尿には種類がありますので、心因性頻尿だと思っていても、実際には他の要素が原因となって頻尿の症状が出ていることもあります。尿もれなどの自覚症状がある場合にはその可能性が高く、自律神経が乱れている場合は、過活動膀胱の可能性もあります。
また、男性の場合は前立腺肥大症が原因となって頻尿を引きおこしているケースもあります。更に、膀胱炎、糖尿病などの別の病気を患っている可能性もあるため、「心因性頻尿かも」と自己判断せず、一度適切な診察・診断を受けるといいでしょう。

心因性頻尿の治療方法とは

病院で行う治療法

泌尿器科や婦人科などを受診し、頻尿の原因が心因性頻尿と診断されたら、専門医への相談が必要となるケースもあります。症状によっては薬による治療を行ったり、行動療法によってトイレに対して抱いてしまった不安や恐れを徐々に取り除くこともあります。

自分で行う対策

生活習慣や環境の見直しを行うことも、頻尿を改善していくためには重要ですので、その方法をご紹介します。

  • 飲み物の種類や量を調整

    カフェインを含むコーヒーやお茶には利尿作用があるので、過剰摂取を控えます。それ以外の飲料でも、過剰に摂取すると尿量が増えてしまいます。

  • トイレに行きやすい環境を作る

    なかなかトイレに行けないと、よりトイレのことを意識してしまうことがあります。トイレに対する不安を和らげるためにも、可能であればトイレに行きやすい環境を作るといいでしょう。もし、外出する場合でも、トイレを利用できるポイントを確認しておくことによって「トイレに行きたくなっても大丈夫」という気持ちを持つことができます。

  • お腹を圧迫しない

    女性の場合は、ストッキングやレギンス、タイトスカートなど衣服によってお腹を圧迫してしまうこともあります。その刺激が頻尿に繋がることもありますので、なるべく腹部を圧迫しない、ゆとりのある衣服を着用するといいでしょう。

  • 体を温める

    体が冷えると膀胱を刺激し、過剰に反応してしまうために膀胱内に溜まった尿量が少なくてもの尿意が来てしまいます。それを防ぐためにも、体を温める食材を意識して摂るようにしましょう。

心因性頻尿かもしれないと思った方は病院で相談してみましょう

不安や緊張などが原因となって症状が出てしまう心因性頻尿についてお伝えしてきましたが、症状の改善のためには、病院で先生に相談してみましょう。
体には特に異変がない場合、余計に不安に感じる方もいると思いますが、原因を探り、適切な処置をすることで心因性頻尿は改善することが期待できます。リラックスさせるために「近くにトイレがあるから大丈夫」「対策をしているから安心」と、自分に言い聞かせてみるのもおすすめです。

<参考文献>

1) 窪田 泰江: 臨床泌尿器科 67(7): 533, 2013
2) 髙橋 さゆり: 治療 93(6): 1470, 2011
3) 福井準之助: 排尿障害プラクティス 15(4): 329, 2007
4) 服部 益治: 小児看護 38(3): 336, 2015