正しい尿失禁対策してますか?症状を悪化させないためにできること

自分の意思とは関係なく尿もれしてしまう、そんな人はトレーニングや普段できる対策をチェックしておきましょう。普段の生活で簡単にできる対策です。しかし、正しい対策をするには、自分の状態を正確に知ることも大切です。ここでは、尿失禁が起こる原因と改善・予防に役立つトレーニング法をご紹介します。

尿失禁がおきる原因

軽い尿もれなのか、それともひどい尿失禁が起こってしまっているのか、自分が今、どんな状態なのかを確認することが大事です。膀胱炎になったことがきっかけで頻尿状態になる人もいますが、膀胱炎や性感染症などの病気が原因でないなら筋肉や神経系の問題が起こっている場合もあります。

尿失禁の種類

尿失禁の種類はいくつかあり、実は原因も種類によって変わります1)

中高年女性に見られる尿失禁で多いのは、このうち腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁、この2つの症状を合併する混合性尿失禁だといわれています2)。特に女性は閉経後、子宮や内臓を支える骨盤底筋の力が弱まります。骨盤底筋が緩むと尿道の位置と骨盤底筋の位置がずれ、筋肉の動きで尿をうまくせきとめられなくなってしまいます。そのため、笑ったりちょっとした運動をしたりしただけで尿失禁が起こってしまうのです。
また、上の要因以外にも心因性の尿失禁や頻尿もありますが、心因性なのか骨盤底筋がゆるんでいるからなのかは判断をすることが難しいため、専門家の診断が必要になることがあります。

尿失禁を改善するには

筋肉を増やすためには筋トレをしますが、骨盤底筋もトレーニングで改善できる可能性があります。閉経が近づいてきたらトレーニングを取り入れて予防をするのも良いでしょう。正しい方法を身につけて改善していきましょう。

尿失禁を予防・改善するトレーニング方法

骨盤底筋と排尿筋が原因で尿失禁をしてしまう腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁の場合、骨盤底筋のトレーニングや膀胱の訓練で改善できることがあります。その方法をチェックしていきましょう。

骨盤底筋体操3)

骨盤底筋体操は正しい方法で毎日続けることにより、徐々に持久力をつけることができます。姿勢は仰向けで膝を少し立てた状態、肘や膝を床につき四つん這いのような状態、机に両手を載せてもたれた状態、座った状態など、自分に合った体勢で行います。

  1. 深呼吸などを行い全身の力を抜き、神経を骨盤底に集中させる
  2. 肛門または膣をお腹の方へ引き上げるような感覚で5秒ほど締める
  3. 締めた筋肉を緩め、再度5秒ほど締めることを5~10回繰り返す
  4. 少し時間をおいたら、1秒ごとくらいの速さで、リズミカルに締めたり緩めたりを5~10回繰り返す
  5. 以上の動作を1クールとし、1日に4クール以上行なう

膀胱訓練4)

頻尿になって尿失禁してしまうという人は、それほど尿が溜まっていないのにトイレに行きたくなってしまう傾向があります。これは尿を我慢する訓練で問題を解消できる場合があります。尿意を感じてすぐにトイレに行くのではなく、5~10分我慢してからトイレに行くようにします。5~10分我慢できるようになったら、少しずつトイレに行くまでの時間を延ばしていきます。

どれだけ間隔が長くなってきたのか、記録をつけておくとより膀胱訓練の成果が分かりやすくなるでしょう。

普段から気をつけておきたいこと

運動や訓練による効果が現れるまでには時間がかかってしまうので、尿失禁することを前提に対策もしておかなければなりません。代表的な対策と、訓練のときの注意点についてみていきます。

尿もれパッドの使用

尿もれがアウターに響かないようにするためには尿もれパッドが役に立ちます。今では高齢者だけでなく、20代や30代の人向けにも機能性の高いものが作られており、吸水性に優れていて、薄く作られていますし消臭効果もあります。尿もれパッドがあればなにより不安が解消できるのが大きなメリットですが、尿失禁がある人があまりにも早いうちから尿もれパッドで対策してしまうと、依存性が強くなるともいわれています。そのため他の治療と組み合わせて補助的に使うのがよいとされています5)

かぶれに注意

尿失禁がよく起こってしまう場合は、デリケートゾーンがかぶれないようにするためにも、いつもよりもケアを入念に行ないましょう。吸水性が良い尿もれパッドを利用しているならかぶれる心配は軽減できますが、雑菌を増やさないようにするためにも濡れたまま下着を放置してしまわないようにしましょう。雑菌が増えることで膀胱炎になる可能性も高くなり、そうなると余計に泌尿器系のトラブルが増えてしまう場合があります。以下の3つの対策をして、感染症を起こさないように予防しましょう。

・吸水性の良い尿もれパッドを使用する
・定期的に尿もれパッドや下着を交換する
・デリケートゾーン用の石けんなどで洗って清潔に保つ

強く力まない

腹圧性尿失禁は、お腹に力が入ることによって引き起こされます。失禁をしないようにするためには、普段から「お腹を締めるようなファッションをしない」「お腹に余計な力を入れない」などの対策をしておくことが大切です。

<参考文献>

1) 泌尿器科領域の治療標準化に関する研究班 編: EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン じほう: 尿失禁の基礎知識 2. 病態, 2004
2) 日本排尿機能学会 女性下部尿路症状診療ガイドライン作成委員会 編: 女性下部尿路症状診療ガイドライン第1版 リッチヒルメディカル株式会社: 23, 2013
3) 今丸満美: 泌尿器ケア 14(10): 993, 2009
4) 巴ひかる:医学のあゆみ 238(4): 325, 2011
5) 泌尿器科領域の治療標準化に関する研究班 編: EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン じほう: 高齢者尿失禁ガイドライン 3. 治療, 2004